隣の彼女が厨二病だったんだけど。





「……それで、君の質問だけれど。私はちょうど買い物をするために外に出ていて、だから君の後ろに居る。それだけ」

「そうですか……」

「質問は以上?なら用件は何かしら」


関わるなとは言われたけど、会話はそれなりにしてくれるんだよなあー……。

質問は以上?とか言われると途端に質問したくなるのが人間の性と言うかなんというか。

けれど神坂レイはこれ以上答える気がないのか、「用件は?」と2回言ってくるのでたぶん質問しても無駄だ。

俺はしぶしぶ鞄の中から渡辺先輩に預かった用紙を取り出した。


「その紙はなに?」

「これを神坂さんに渡してくれと先輩からの言伝(ことづて)です…」


紙を差し出すと、神坂レイはそれをゆっくりと受け取った。

美術部勧誘の用紙であるそれを、一通り眺めてから折りたたむ。


「わざわざありがとう」

「いいえとんでもございません!」

「用件はこれだけ?」

「…………。これだけ、です…」


用件を考えたけど何一つ出て来なかった俺マジ涙目。


「……そう。それじゃあ、私はこれで」


神坂レイがスッと横を通り過ぎる。

不意に見えた頬に、あの時の傷跡はなく。

ガチャっとドアが開く音と共に振り向き、思わず背中に声をかけた。