渡辺さんは持っていたファイルの中をごそごそと漁り、何かを探しているようだ。
ちょいちょいファイルの中の紙が見え隠れして、何かの絵がちらつく。
風景画だったり人物画だったり、アニメか何かのキャラも居る。
知ってるアニメのキャラは居ないだろうかと地味に探してしまうのは仕方ない。
「……渡辺ー…先輩は、美術部か何かに入ってるんすか?」
「んー?うん!そうだよ!え、なんでわかったのすごーい!少年キミエスパーなの!?」
「いえあのー、絵が見えたんで」
「ハッ!そっかごめんね!キミたちには目に毒な絵もあるから気を付けてね!」
さっきからちょいちょい意味がわからない言葉を挟んでくる渡辺先輩である。
……あれだろうか、俺等をアニメとかラノベとかをまったく知らない一般人だと思っているのかだろうか。
だからアニメのキャラ絵が目に毒だということだろうか。
大丈夫っすよセンパイ!
アニメとかラノベとか見たり読んだりしてる方の人間っすから!
「んーっと……あっれー?これに入れておいたはずなんだけどー……っと、あったー!」
ガサゴソとファイルを漁っていた渡辺先輩は、目的の紙を見つけたらしく、それを取り出して見せた。
若干ぐしゃっとなっているのはご愛嬌である。
「ねえねえ、このクラスに神坂レイって居るよね?」
「居ますー…けど今は停学なんすよ」
「知ってる知ってる!その神坂レイちゃんにね、これ渡しておいて欲しいんだけど、家知ってる人居ないかなあーって思って、探してるのね!」
差し出された紙を見る。
ぐしゃっとなったそれは、美術部の勧誘用紙だった。


