その声の主以上に驚いた俺が椅子から転げ落ちると、驚きの声が爆笑に代わった。
「あはははははッ!!愉快な少年だねー!」
笑いながらそう言ったのは見知らぬ女子生徒。
雰囲気的に先輩なんじゃないかと思う。
何故かその人はベランダに居て、俺は窓際の席なのですぐ傍に声が聞こえたのも無理はない。
くせ毛なのか巻いてる(っていうんだっけ)のか、ゆるいウェーブのかかった肩上までの髪の毛が、童顔(失礼)の顔立ちによく似合っていた。
つまり要約すると、可愛い。
「……えーっと、あの、どちら様で…?」
「んー?あ、もしかしてあたしのこと?」
他に誰がいるというんだろうか。
「あたしはねー、渡辺っていうの!よろしく、少年!」
「なんか俺の名前が“少年”みたいに聞こえるんすけど」
「というか、話をする前にきちんと椅子に座ったらどうだ高橋。それともお前はみんなに見下されるような位置の方がいいのか。」
「坂本に見下されることはすでに慣れているがしかしみんなから見下されるとさすがの俺も心が折れる」
「だったら椅子に座れ。」
「すんません」
ガタガタと椅子を起こして席につく。
渡辺さんはその間もずーっと笑っていた。ツボが浅いらしい。
「キミたち仲良いねー、ここで知り合ったんじゃない感じがする!」
「ただの腐れ縁ですよ。」
「そうなんだー!掛け算しやすそー!」
「かけ……?」
「あ、それよりもだね~……」


