隣の彼女が厨二病だったんだけど。





神坂レイは瞼を閉じ、ため息をひとつ。


「……君は、昨日私が言った言葉を覚えていないの?」

「昨日?」

「君、若年性健忘症なのね」

「断じて違う!」

「だったら思い出せるでしょう」

「思い出せるっていうか覚えてるしずっと理由を考えてるところだったんだよ!」

「理由?」

「なんで関わるなっていうのか、理由を考えてた」


“私に関わらない方がいいわ”


神坂レイは少し間を開けて、「そう」と。


「理由ね。それなら、さきほどの状況が答え。アンサー」

「さっきって……何かと戦ってるっていうアレか?アレなのか?」

「それが本当だったのかどうなのか、それは言わないけれどね」

「ふむ。じゃあ俺本当に一票。清き一票!」

「……君は本当に馬鹿なのね。もしかしたら、私はただの厨二病、かもしれないのに」


神坂レイが厨二病という言葉を知っていたことに驚きを隠せない俺である。

でも確かに、今周りに人っ子一人いないわけで、神坂レイが何かと戦っていたという事実を肯定する証拠はどこにもない。

けれど昨日、初対面にも関わらずゴミ袋持ってるだけの俺に、筆を武器にして向かってきた神坂レイには、何かやっぱりあるんじゃないかという勝手なこじつけ。

あともうひとつ。


「ほっぺた、血が出てるし」


傷があること。