途端に館内はざわめき始める。
「神坂レイ?」
「誰?」
「新入生代表?」
「あの子なに?」
「意味わかんない」
四方八方から聞こえてくる言葉に、今はもう恐怖心を感じられない。
倒れた椅子を起こす人がいる。
元の場所に座る人がいる。
ステージの方から教師の声が聞こえる。
ため息や笑い声が所々で聞こえる中、俺はずっと神坂レイが出て行った扉の方を向いていた。
昨日からなんか気になる。
昨日の今日でこれだから気にならないわけがない。
そう思ったらじっとしていられなくなって、思わず立ち上がる。
が、しかし制服を引っ張られて椅子に逆戻り。
「何をする坂本氏!」
「高橋、ひとつの可能性として問おう。お前が言っていた神坂レイとは、今のヤツか?」
「まさしく!すげぇ美少女だっただろ!」
「逆光でよく見えなかったが、アレは、」
「なんだよ」
「……間違いなく厨二病だろうな。それも末期の。」
「今の全部演技だっていうのか!」
「9割そうだとしか思えないが。」
「OK、わかった。じゃあ俺は残りの1割を選ぶぜ!」
言葉と共に立ち上がり、椅子に戻る生徒たちの間を縫って、開けっ放しの扉へと走る。
背後から坂本の「……死亡フラグの神だな高橋。」という呆れた声が聞こえたが気にしない。


