「これ、使いなよ」 スッと後ろから伸びてきた手に、思わず肩を揺らした。 「傘、ないんだろ?」 と折り畳み傘が差し出される。 「えっ、榛名くん……?」 見上げたその顔を見て、私は驚いた。 今まで一度も話したことはないけれど、彼のことは知っていた。 学校の女子がいつも「カッコいい」と騒ぎ立てていて、かなり目立つ存在だったから。 端正な顔立ちにスラっとした長身――… さすがモテるだけのことはある。