「ただいま……」 「お帰り~っ、麻有!」 玄関のドアを閉めると同時に、リビングから由真(ゆま)ちゃんが出てきた。 いつも明るい人だけど、今日はいつにも増して機嫌がいい。 「遅くなってごめん。ご飯すぐ作るね」 お父さんは単身赴任中、お母さんは夜遅くまで仕事をしている為、ほとんど姉の由真ちゃんと二人でいることが多い。 だから料理が苦手な由真ちゃんに代わって、私が毎日夕ご飯を作っている。 「それって男物?」 乾かす為に折り畳み傘を足元に広げると、珍しそうな顔を向けられた。