天神学園高等部の奇怪な面々Ⅳ

藤原 月姫(ふじわら つきひめ)。

龍太郎と同じ天神学園高等部1年。

春以降に龍太郎と知り合った女子生徒である。

本人も空手をやっている龍太郎にとって、武道をやっている月姫と知り合うのは当然と言えば当然の結果だった。

木刀を持っている事からもわかる通り、月姫は剣術を嗜む。

喧嘩好き、決闘好きの龍太郎は、是非とも一度手合わせしてみたい相手なのだが、月姫の返事はいつも決まっている。

「やぁよ、私は兄上以外の男となんて手合わせしないんだから」

…月姫の兄は、名を藤原 宜虎という。

着流し、木刀、べらんめぇ口調、身長だって龍太郎よりも遥かに低い男なのだが、これが熊も退散させるほど滅法強い。

その兄を溺愛?狂愛?する月姫は、少々というか過剰というか、ブラコンの気があった。

「そんなに強ぇ兄貴なら、俺ぁそっちの方と立ち合わせてもらうかな」

汗を拭いながら龍太郎が言うと。

「!」

ギラリと。

殺意すら帯びた眼差しと共に、月姫は木刀の切っ先を龍太郎の鼻先に向けた。

「兄上に一寸でも近づいたら木刀で金的打った挙句、脳天に刺突かまして叩き割るわよ?」