腕で額の汗をグッと拭い取る。

帰りに缶コーラでも呷りたい所だ。

暑くてやってらんねぇんだよ、と言わんばかりの表情。

仕事終わりに立ち飲み屋で一杯引っ掛ける中年サラリーマンの心境である。

コーラでは酔えないのが切ない所だが。

どこかに当たり散らしたい。

鬱憤を蓄積させながら歩いていると。

「あ、馬鹿発見」

龍太郎の背中に怒りを助長させる言葉が投げかけられる。

即座に振り向いて呪い殺さんばかりの視線を向けると。

「相変わらず目付き悪いわねー」

この炎天下にもかかわらず、涼しげな表情の美少女が立っていた。

結わえた黒髪には簪、右肩に担いだ木刀、左手には市松模様の巾着袋。

制服は着ているものの、スラリと伸びた健康的な脚には足袋、そして下駄を履いている。

和洋折衷というか、和風の小物を取り入れているというか。

何にせよミスマッチなようでいて、意外としっくり来る出で立ちだった。