静かな海の兄き

「義兄さん…」

薄暗い室内から

電話で聞いた

沢渡氏の声が聞こえた。

「眠ってるだけにしか見えないんです…。」

震える声で言うと

沢渡氏は 両親を

白い布をかぶせられた
“遺体”の元へ案内した。

「会ってやってください…」

そう言って

布を取った 沢渡氏


父は

「宏史…」

と

一言呟き

声をころして

泣き崩れた…

母は…

もう

悲鳴にしか聞こえない声で

「宏史っ宏史っ!」

何度も名前を呼び

宏史の体を抱きしめた…


その光景を

呆然と見ていた翔の元に

沢渡氏が静かに歩みよって来た。

「電話で…何も言えなくて
ごめんね。」

翔の肩を抱き

そう言う沢渡氏に

翔は

ゆっくりと首を横にふって答えた。

「翔くんも…
会ってやってくれる?」

沢渡氏の問いに

また

ゆっくりと頷いて答えた。