A sweetheart is a ghost

時計の針の音だけが進むけど時間が進んでるって感覚はなかった。

時間は過ぎていくのにぜんぜん言い訳が思い浮かばない。


「ま、いいや。とりあえず今日は泊まってってよ。熱あるし1人にするの心配だからさ。」


あきれたかのように言う亀川さん。

だめだよ…潤一のところに帰らなきゃ。

でも言い訳が思い浮かばない。


「いや、明日仕事だし…着替えとかもあるから…帰ります。」


しぼり出すような声で言うと


「ダメに決まっとる。1人でまたウロウロしてさらに風邪ひいてもらったら上司の俺としても困るしな。安心して。何もしないよ。」


そう言うと体温計を差し出してきた。


「もう1回計ってみて。」


そう言いながら。


どうにかして帰らなきゃ。

でも帰るためのきっかけがわたしにはない。

一人暮らしだから親のせいにもできないし。

考えながら体温計をワキにはさんだ。


…あれ??

下着…つけてない。


「亀川さん…もしかして…見ました??」


戸惑いながら聞くと


「あぁ。しょうがないじゃん。ズブ濡れのもの着せておくわけにもいかないし起こしても起きないし。病院連れて行こうて思ったけど嫌がるだろうなって思ったし。確か緒方さん病院嫌いでしょ??」


いやいや…見られるより病院のほうがよっぽどよかったよ。

恥ずかしくて穴があったら入りたい。

でも…わたしはそのおかげでまだ寒い想いせずにすんでるんだよね。

責めるのはお門違いだ。


「なんか色々…すみません。」


恥ずかしくて下を向きながら言った。