「いいから、ここで待ってて」

小さな時の、小さな出来事がとてもとても

大きくなってしまうなんて誰も、

思ってなかったんだね。

「アユムくん、待ってよお。おいてかないで」

「いいから、シズクはそこにいて」

あたし達は、まだ幼かった。

大好きなお父さんとお母さんに連れてきて

もらったスキー場。

そこに偶然、大好きな幼馴染のアユムくんが

いた。

「あらまぁ、水谷さんっ。」

「あっ、品川さん。アユムくんも。

大きくなったねえ、シズクと変わらないわね」

あたし達は、親同士がとても仲が良かった。

水谷シズク(6歳)

品川アユム(7歳)


「じゃあ、二人で遊んできなさい」

「やったあー!」

あの時は、どれだけ嬉しかっただろう。

「アユムくん、どこ行くの?」

あたしは、引っ張られるがままに

アユムくんに強引に腕を引っ張れていた。

「いいところだよ。シズクちゃんが好きな場所」

あたしはとてもとてもわくわく

していたんだ。


大分、歩いたらふと、アユムくんが

立ち止まった。

「どおしたの?アユムくん」

「ここで、待ってて」

「え、どおして?」

「いいから、待ってて」