“あいつ……死んだよ”



彼女が亡くなったことは兄貴から聞いた俺。



“俺からはもうこれ以上は何も言わない。父さんや母さんにもだ”



兄貴は目に涙を浮かべながら、俺の顔面を一発殴った。



俺は力が抜けてその場にしゃがみ込んだ。



兄貴に殴られたことよりも、彼女がもういないっていう事実の重さに耐えられなかった。



どうして??なんでだよ……分かんねぇよ。



だって、だって……俺たち、やっと、やっと……これからだろ??



抱きしめた彼女の感触。



今だってこんなに覚えてるのに、何で勝手にいなくなるんだよ。



いつの間にか流れ出す涙に、先に気づいたのは兄貴だった。



兄貴は俺の背中をさするようにして、



“葬式には出てやれよ……あいつのためにも”



ひと言そう言い残し、その場を離れた。