「私の弟、偶然にもこの学校の生徒の母親と付き合ってるんですよ」



どんなことから、こんな話題になったのかなんて覚えてもいない。



「へぇ、そうなんですか……」



特に興味もなく、ほとんど無反応だった俺に、



「その相手っていうのが、実は、三嶋先生のクラスの澤村、澤村美波の母親なんです」



堀池先生は、よほど俺の興味を引きたいのか、



“澤村美波”の名前のところだけ、



ゆっくりと、そして大きな声で言ったように思えた。



気のせいか、わざとなのか、



俺の反応を確かめるかように、横から堀池先生の視線を感じた。