「……はぁ……」



俺の言葉に堀池先生は小さなため息をつくと、



「なんだかもっと好きになりそう……」



小声でそうつぶやいて、俺をジッと見ていた。



その表情は、かすかに微笑んだようにも見えた。



さっきまで涙を見せていたくせして、



まったく女ってのは、俺にはわからない。



俺は遠まわしに断ったよな??



なのにまた変な方向に向いてしまう。



教師同士の恋愛ってのも、俺にはただ面倒なだけだってのに。



「もう仕事も終わりましたし、送りますよ」



心にもないようなことを、言ったあとで思う。



俺はどこまで“いい先生”であり“いい男”でいたいんだろう。



自分の口から出たセリフを、冷静な俺がせせら笑う。



俺は自分のこともわからなくなりそうだな。