「圭吾さん」


わたしはすがりつくように圭吾さんの胸に顔をうずめた。


だいじょうぶ

わたしは必要で、愛されてる

どこにも隠れる必要なんてない


圭吾さんは片手でわたしを抱きしめ、もう片方の手を窓の方に向けた。

ヒュッと空気を切るような音がして、頭の中で繰り返し響いていた声が消えた。


「まったく、しつこいな」

圭吾さんが言った。

「志鶴、だいじょうぶか?」


「うん」


「どうして窓まで行った?」


「声がしたの。わたしを呼んでた」


「追い払うだけじゃ、らちが明かないか」

圭吾さんはわたしの髪を撫でた。

「おいで、まだ夜中だ。もう少し眠ろう」


そうか

わたし眠ってたんだ


わたしの部屋のベッドじゃ狭いからって、和室にお布団敷いて二人で寝たんだった。


圭吾さんがいなかったら、わたしはどこに連れて行かれたんだろう


あの声は誰の声なの?


あの影は何?