奥の部屋から圭吾さんの低い声とパンッと手を打つ音が聞こえる。

何かをお祓いしてるような感じ。


羽竜一族の人達が『本来の仕事』と呼ぶもの

人と土地を守る鎮守の仕事らしいけど、どんなことをするのかはよく知らない。


圭吾さんは前に一度、そういう仕事先にわたしを連れ歩いて苦い思いをしている。

あれ以来、わたしを仕事に連れ歩くことはなくなった。

わたしが巻き込まれて倒れたのは、圭吾さんのせいじゃないのに。


ダイニングテーブルの椅子に座ってぼんやりと考えていると


――あんたは邪魔者なんだよ


心の奥から馴染みのある声が聞こえる気がした。


違う

わたしは邪魔者なんかじゃない


「志鶴? どうした?」


いつの間に戻って来たのか圭吾さんが目の前で手を振っている。


「圭吾さんはわたしが必要なんだよね?」


「そうだよ。急になんだい?」


「時々ね、確認しないと不安になるの」


圭吾さんはわたしの前にひざまずいた。


「君を愛しているよ。胸が痛くなるほど愛している」


わたしは圭吾さんの首に腕を回して、頬に頬を寄せた。


「大好き」