某有名百貨店の
広いフロアは高級感に溢れ
様々な絵画で飾られていた


記帳はせずにそのままフロアに入る
下手に住所とか書いてたまるか

等と思っていると
スッと目の前に腕が出される


一瞬戸惑ったが
小松原の演技だとわかり


すぐに
ふわりとほほ笑んで
その腕に手をかけた



「ああ、高宮さん!」

振り返ると
着物姿の初老の爺がこちらに向かってくる

私はそっと小松原に目配せをした

私の視線を捕えた小松原は
「大丈夫」というように
腕に力を込めた


「お招きいただきありがとうございます。」

丁寧に礼を言って
最後に微笑んでやる


「いやいや。
来ていただけるなんて光栄じゃ。

…ところでそちらは?」


急にエロ爺の顔が曇った

小松原はそんなのを気にすることなく
人の良さそうな笑みを浮かべる

「初めまして。
鈴さんと結婚を前提に
お付き合いさせていただいてます。

小松原です。
本日は先生にお会いできて光栄です。」



「結婚を前提に」だぁ!?
思わずいつもの口調で悪態をつきそうになったが
必死で堪えて

恥ずかしげに目を伏せるそぶりを見せる


その姿に
さすがのエロ爺も言葉を失っていた



ふふふ
してやったり!