【短編】保健医の憂鬱

「はい、頭上げて。」


アイスノンを敷いて
冷えピタを貼る

「お粥作ったから
しっかり食べなさいよ?」


「あぁ。サンキュ。」


だがつらいのか
一行の起き上がろうとはしなかった


そんな姿をしり目に
ヤツが脱ぎ捨てたスーツを
ハンガーにかけて形を整える


ったく

つくづく私っていい女


昔から面倒見がいい方だが
相手が病人となると
何故かほっておけないのが玉に傷だ


「じゃあ、私は帰るけど
水分しっかり取ってバカみたいに寝なさい。

カギはポストに入れておくから

…何かあれば携帯に連絡して。

じゃね。」


力なく上がって右手を確認して
私は小松原宅を後にした



もうとっぷり日が暮れている


はぁ

ここから電車で二駅
駅から歩いて15分




帰りの工程を想像しただけで
急に足が重くなった気がした



お腹もすいたし…



誰か…
適当にご馳走してくれて
送ってくれる人いないかなぁ


思い立った私は
携帯電話を取り出した
アドレス帳から呼びだしたのは
グループ分け「BF」のファイル