【短編】保健医の憂鬱

「こんにちわぁー。」


穏やかな声とともに
長瀬が巾着とタンブラーをもってやってきた


「いらっしゃい。」


慣れてしまった私は
長瀬に合わせて
向かいあうようにソファに座る


「あ、先生。
今日は先生の分もお弁当作ってきました。」


「まじで?」


「はい。」と嬉しそうにほほ笑む長瀬
うぅ~可愛い…

なんだろう
その無垢な全てを汚したくなる…


教育者としてあるまじき考えを
振り払って
長瀬が広げる弁当の中身に意識を向けた


「うわぁ…すごい。」

ハンバーグにたまご焼き
ウインナーはもちろんタコ
プチトマトとブロッコリーが彩に花をそえる


まったく同じ中身のお弁当箱が二つ
そして

「先生にもジャスミンティ持って来たんですよ。」

とタンブラーまで取り出した

しかも
しっかりデこってる


「な、なんかごめんね…。
私の分まで大変だったでしょ?」

余りの出来過ぎに恐縮していると
長瀬はぶんぶんと首を横に振った