【短編】保健医の憂鬱

体温計を確認すると

「38.5分…。」

結構あるな…

とりあえず氷嚢を敷くために
小松原の頭を持ち上げる


「高宮…わりぃ…。」

うつろな表情でつぶやく小松原
そこにいつもの憎たらしい
飄々さも俺様はなかった


「謝るくらいなら
風邪なんてひかないでよ。

はい、薬のんで。
少し寝れば楽になると思うから。」

「ん。」



順々な小松原に少し優越感を感じながら
私はそっとカーテンを閉めた


健康体が取り柄だと思っていたのに
バカでも風邪ひくもんだ…


ちょうど昼休みを告げるチャイムがなり
廊下が騒がしくなる

今日も
長瀬は来るのだろうか?


最近はほぼ毎日のように
ここで長瀬と一緒に昼食をとる


この前は
白衣のボタンを長瀬が
常備しているという裁縫セットで
つけ直してくれた


私…
ああいう少し変わったタイプに
懐かれるのかな…?


変わったタイプ…
という言葉に村岡が浮かんでしまい

全身に悪寒が走った


「勝手に出てくんな!
変態野郎!!」

心の中で
盛大に罵っても
イライラは消えてはくれなかった