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ジャダハールの領土に入った。



莉世を連れているアクバールはホッと肩の力が抜けた。



夜の砂漠の移動は神経を使う。



しかも一人ではなく、腕の中にはラシッド様の寵姫リセ様がいる。



無事にジャダハールに連れて行かなければならないのだ。



よくぞ、あの竜巻で生きていたものだと思う。



あの時のラシッド様を見ていられなかった。



昼夜問わず、竜巻の去った場所を捜し回った。



睡眠も食事も削ってまで。



身体はボロボロだったが、ずっと敵対国だったバルクーク国との友好調印があり、出掛けた矢先、信じられない話が舞い込んできた。



踊り子一座の団長の話を聞いた時には耳を疑った。



本当にリセ様なのか?



容姿を事細かに説明されて、リセ様だと確信した。



元気だと教えられ安堵したのもつかの間、リセ様はハサート王子と結婚させられてしまうと聞いて驚愕した。



しかも結婚式は明日。



時間がない。



ラシッド様と私はリセ様を救出する策を練り始めた。