それからが針のむしろの上にいるような気持だった。



ハサートは酒が入るに連れて莉世の腰を引き寄せ、鎖骨や頬に唇を寄せる。



こういう風になる事はお兄様だって予想できたはずなのに……。



莉世は泣きそうだった。



しばらく忍耐力が試される時間が続いた。


そして国王がおもむろに明日の結婚式の為に花嫁はもう下がって良いと言った時には心の底からホッとした。



それと同時にこの場を離れたらラシッドの存在が失われてしまうことを恐れた。



莉世はその場を去る時に振り返り、ラシッドの姿を求める。



見えたのは整った精悍な横顔だけ。



これからどうなってしまうの……?



心の中にどす黒い不安が広がっていく。



「リセ様?」



護衛の女性が付いてこない莉世に声をかける。



「は、はい……」



前後に護衛が付き、莉世は身を切られる思いで宴を後にした。