携帯のリダイヤル画面から、電話をかける。



相手はもちろん、侑



侑は、たいてい、早く出てくれる。




「侑、今どこ?」



『いつもの喫茶店にいるよ』



愛しい、やさしい、侑の声


「ん、行く」



『うん』


たぶん、侑と何度も行ったこの大学近くの喫茶店だ。






侑に、会いたい








朝会ったばかりなのに。


そう考えて自分を笑う。


それでも、会いたい気持ちが自然と駐車場へと歩く速さを上げる。





喫茶店の近くに車を停め、店内に入るが侑の姿はなかなか見当たらない。






―――――侑?





もう一度注意深く店内を見渡すと、でかい二人の男の陰に隠れて、侑の姿がちらりと見えた。





侑はよく男に声をかけられる。


真っ白で透き通った肌に長いまつげの大きな瞳、かわいいピンク色の唇にやわらかい長い髪。




侑は、美人だ。


それも、かなりの。



加えて、華奢で、かわいくて、優しい性格からやわらかい雰囲気がにじみ出ている。




そういうことに関して、本人がまったくの無自覚で、無防備すぎて、何度男を追い払ったことか。








そんなことを思い出したが、ナンパされて、嫌々ながら、という雰囲気ではない。


むしろ親しげで、侑がかなり気を許しているのがわかる。






なんで、男といる?






侑に会えると弾んだ心は、一瞬で黒い感情に覆われる。







「侑」




自分でもわかるくらい、低い声になってしまった。



ずっと、

侑にはそんな自分を見せまいとしていたのに――――