「どうして、そう思うの?」


千真はそう、やさしく訊いてくれたけど、


「‥‥‥‥‥なんとなく」


この、ごちゃごちゃした感情を伝えられる自信がなくて、それしか言えなかった。


なにより、本当のことを話して、この大切な人たちに離れていかれることが


怖くて、たまらなかった―――





「‥‥‥‥そっか」


それだけ言ったのは千真だったけど、三人ともなぜか、何か言いたそうな、複雑そうな顔をしていた。


―――――どうして?



何か、また変なことを言ってしまっただろうか



わからないまま浮かんだ疑問にふたをして、考えることを頭が拒否した。





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放課後、大学近くの喫茶店でのんびりとお茶を飲む。
今日は加奈はバイトだから、千真と弘之の三人でまったりしていた。


ふと鳴り出したオルゴールの着信音は、侑のケータイのもの。



見ると、思ったとおり、先輩からの着信。



『侑、今どこ?』


携帯から聞こえる先輩の声が近くに感じられて、くすぐったい気持ちになる




「いつもの喫茶店にいるよ」


『ん、行く』



やさしい、声



「うん」

それだけ言って、ピ、と電話を切る。


「瀧沢先輩?」


「うん、来るって」


千真に答えながら、お茶請けのシフォンケーキをほおばる。


ミルクティーとシフォンケーキも、侑の好物の一つだ。





カラン、と店のドアの鈴が涼しげに来客を知らせる。


しばらくして、





「侑」




低い、不機嫌そうな声に振り返ると、先輩が立っていた。





「‥‥‥‥‥先輩?」



「あ?」



なんだよ、と言いたげな不機嫌な声に何も言えなくなる。






―――――さっきの電話では普通だったのに。


ここにくるまでに何かあったのかな?


少し首をかしげる。


それには触れないほうがいいかも、と考えて、違うことを口にした。