「侑」
大切なものに触れるように、そっと浩太の手がやさしく頬に触れて、その手のあたたかさに、ゆっくりと顔を上げた。
見上げた浩太の顔は切なそうに歪んで。
でもそのきれいな瞳はにごることも揺れることなく、真剣に、真っ直ぐに、私の瞳を貫いた。
「侑が、好きなんだ」
さあっと風が流れて、深い緑の木の葉を揺らし、涼しげな音を奏でて、浩太と私の髪を揺らした。
「妹だなんて思ったことない。一人の女として、ずっと、‥‥ずっと、侑が好きだった」
外界から隔たれたように、車の音も、通り過ぎる人々の話し声も、この耳には届かない。
聞こえるのはただ、浩太の少し低い、澄んだ真っ直ぐな声だけだった。
「‥‥‥気付いてたんだろう?」
そうかもしれない。
いつもは周囲を照らしてやまない太陽のように笑う浩太の顔が悲しそうに微笑む。
そんな顔を見ても、私の中に広がるものは愛を打ち明けられた嬉しさよりも、何かが壊れゆく切なさと悲しみだったから。

