「ここ、おいしくてね。いつか侑を連れて来たいと思ってたんだ」
目的地に着いたらしく、直人は駐車場に車を停めながら言う。
助手席のドアを開け、微笑みながら手を差し出してくれる。
その仕草は流れるように軽やかで、慣れて見える。実際、彼は女性をエスコートすることに慣れていた。
でも、それだけではなく、彼が本当に自分を大切に思ってくれているのを、私は知っていた。
「王子様みたい」
クスクス笑いながら手を差し出すと、
「侑はお姫様だからね」
と微笑んで手を握ってくれる。
先輩は、いつも助手席を開けてくれるけど、直人のように手を取ってくれたこと、ない。
ちくん、と胸が痛んだ気がしたけど、そこが先輩らしい。
いつもぶっきらぼうに見えて、本当はやさしい。
たまになぜか不機嫌になっちゃうけど、やさしく笑って、必ずやさしく頭を撫でてくれる。
彼のことを考えると、ふわっと心があったかくなる。
あ、でも、昨日心配かけちゃっただろうな
直人の電話で混乱していたから。
私の態度がおかしかったことに、鋭い彼が気付かなかったはずがない。

