帰宅途中の学生の間をぬって走る。
日頃ほとんど運動することのない体はすぐに悲鳴を上げ始めるが、荒くなる呼吸と裏腹に足は止まろうとはしなかった。
濃い緑の茂る並木道が見えてくると、正門はすぐそこだ。
門を出たところでようやく足を止め、周りを見渡す。
‥‥せん、ぱい‥‥
胸が、いっぱいになる。
メールを見たときよりも、ずっと。
こみ上げてくる何かを抑えることができず、溢れ出して頬を濡らす。
彼は、車によりかかり、どこか遠くを見ながら煙草をくわえていた。
黒いスーツに身を包み、髪を軽く後ろに流している。
――せんぱい‥‥
声をかけることも忘れ、ただ、彼に見とれる。
ゆっくりと彼が吐き出した灰色の煙は、ふわりと形を変えて青い空へ溶け込んでゆく。
いて、くれた――――
「‥‥ゆ、う‥‥?」
ふとこちらを向いた彼が、私を見つけた瞬間目を見開く。
「‥‥‥どうした‥?」
近づいてきた彼が、そっと右手をのばして私の頬に触れる。
囁かれた彼の声は、甘やかすようなやさしさと甘さを含んで。
胸が、いっぱいになる。
息が、できないくらいに。
日頃ほとんど運動することのない体はすぐに悲鳴を上げ始めるが、荒くなる呼吸と裏腹に足は止まろうとはしなかった。
濃い緑の茂る並木道が見えてくると、正門はすぐそこだ。
門を出たところでようやく足を止め、周りを見渡す。
‥‥せん、ぱい‥‥
胸が、いっぱいになる。
メールを見たときよりも、ずっと。
こみ上げてくる何かを抑えることができず、溢れ出して頬を濡らす。
彼は、車によりかかり、どこか遠くを見ながら煙草をくわえていた。
黒いスーツに身を包み、髪を軽く後ろに流している。
――せんぱい‥‥
声をかけることも忘れ、ただ、彼に見とれる。
ゆっくりと彼が吐き出した灰色の煙は、ふわりと形を変えて青い空へ溶け込んでゆく。
いて、くれた――――
「‥‥ゆ、う‥‥?」
ふとこちらを向いた彼が、私を見つけた瞬間目を見開く。
「‥‥‥どうした‥?」
近づいてきた彼が、そっと右手をのばして私の頬に触れる。
囁かれた彼の声は、甘やかすようなやさしさと甘さを含んで。
胸が、いっぱいになる。
息が、できないくらいに。

