宥めていた俺の背後から、「お兄さん、すみません」と――担任の先生が遠慮気味に声を掛けて来た。
「今日は、ちょっと謝らなければならないことがあって」
申し訳なさそうに言葉を発したのは、ミノリの担任のあさみ先生だ。
「一体、何があったんです?」
俺がそう聞くと、ミノリが何故か過剰に反応を示し、更にダイナミックに泣き声を上げた。
こんなことは今迄あまりなかった経験なだけに、かなり動揺。
「ミノリちゃん、お兄さんがお迎えに来てくれたから、もうだいじょうぶだからね?」
だからそんなに泣かないで、と――あさみ先生は声を掛けてくれていた。
完全に崩れている、今朝セットしたポニーテール。
あの男の子に髪でも引っ張られたりしたのか?
見下ろすミノリの悲惨な髪型にも、俺には耐え難い苦痛。
だが、俺はそれを噛み潰した。
「ミノリ、今日は恭一も一緒に来てるんだぞ」
完全にしゃがんで、泣いてるミノリの顔を上げさせて、笑いかけてみると、
「ひっく、ひっく・・・・・・きょ、きょっ、きょーちゃんもっ?」
泣き声混じりにそう言って、キョロキョロし始めた。

