ネクタイを緩めながら片手でミノリをひょいと抱えあげた親父は、あろうことか――
「ミィ、たまにはパパと一緒にお風呂入ろうか」
と……俺の日課を奪うような言葉を発した。
「パパとおふろぉ~? はいるぅ~」
「涼介、お風呂は?」
「あーごめん、まだ手付かず」
今、やっとご飯を食べ終えた所で……風呂はこれからってな感じだった。
「ミィ、今からお風呂沸かしてくるから、ちょっと待っててな」
「うん」
ミノリは目をキラキラさせながら、恭一に「ミノリちゃん、良かったね~」なんて、言われて更に「うん」て頷いていた。
「涼介、今日は日課が日課にならなくて残念だったなー」
恭一には嫌味タップリの目を向けられる。
「まぁ……たまには、な」
そうだ、偶には父親らしいことをミノリにしてやってもらえないと、ミノリが不憫だ。
と、悔し紛れに思ってみたり。
言い聞かせてみたり。
ただ、この後親父と一緒にお風呂に入ったミノリが、擦り剥いた膝が痛くて泣き出し、
親父はアタフタし……結局、俺も一緒に入ることになったというオチもあり。
結局は、俺がいないと始まらないと、少しは自負してもいいような……そんな1日の終わりだった。
今度こそ、本当に
―完結―

