「涼介、そっちよりも、やわらかいってちゃんと言えてなかったから、そっち練習した方がいいかもだぞ」
「あー、それもあったな」
八百屋での店主とのやり取りを思い出した。
『やわらかい』を、『やらわかい』と言っていたミノリ。
それを思い出して、少し緩んだ俺の頬。
ミノリは『す』、と言いたいんだろうが、しゅしゅしゅと一生懸命に叫んでいた。
このまま大人にはならないが、先ず正せる所は正していかないとだ。
「ミノリ、や・わ・ら・かい、って言ってごらん」
「や、ら、わ、か、い!」
「やわ、だよ、や・わ」
「や、わ」
「そうだ! じゃあ、や・わ・らって言ってごらん」
「やーらーわ」
「違う、や・わ・ら、だ。やわら」
「やーらーわ」
「や・わ・ら」
「やーらーわ」
「や、わ」
「やーま」
「違う、やーわ」
「やぁーわ」
「そう、やわ、だ」
「やーわ」
「やわら」
「やーわーら」
「よし、言えた! やわら・かい」
「やーらわらかい」
「んーやらわらかい? やわらかいだぞ?」
「やわらーかい?」
「そうだ! じゃあ、もう1回な? やわらかい」
「やあらかい」
「やわ・らかい」
「や・あ、らかい」
「やわ、だよ」
「やわ?」
「そう、や・わ・ら・か・い」
「や、あ、ら、かい」

