笑いながら、買う物とおまけしてくれた品物を、袋に入れてくれている店主。
ミノリの耳元でそう言うと、
「おじしゃん! ありがとうごじゃいましゅ」
“さしすせそ”がキチンと発音出来ないのには、どうしたもんかと悩まされつつも・・・・・・
ちゃんとお礼が言えたことにホッとして、さっきの言葉は忘れてくれないだろうかと強く願った。
店主は「また来てね~」と、保育園の駐車場で直した、ポニーテールのミノリの頭をチョンと触った。
「はぁ~い」
何故だか手を上げて返事をしたミノリ。
まあ、そんな姿も可愛くて仕方がないという兄バカ振りだが。
会計を済ませ、俺も店主にお礼を述べて、家に向かって車を走らせた。
今日の保育園での出来事は、すっかり忘れたのか――あまり尾を引いていない様子に、俺は少しだけホッとしていた。
「ただいまぁ~」
「おかえり。ただいま!」
「おかえりなしゃ~い」
同時に帰宅した時は、お互いに“ただいま”と“おかえり”を言い合うことが、自然の流れになっていた。
この家には、“ただいま”と言っても、“おかえり”と返してくれる人間はいない。

