とある夏の日、家に恭一が虫かご片手にやって来た。
「涼介、これお土産! りょうちんにじゃなくて、ミノリちゃんにだけど」
「おおー、サンキューって、それ何だ?」
虫かごの中身はおおよその予想はついていたが、中身がそうとも限らないとも思って、俺はソファーに座った恭一へ質問を投げた。
「雄雌ダブルセットのカブトムシ」
――カブト虫。
ひねりは無し、か・・・・・・。
それにしても、カブト虫って。
「ミノリにカブト虫か?」
「りょうちん、女の子だってカブトムシに興味は持つぞ? 千春なんか、カブトとクワガタを闘わせてギャーギャーうるせーのなんのって」
「へぇ・・・・・・。そういうもんなのか?」
四兄妹の長男である恭一。
その兄妹の中で唯一の女の子である、千春ちゃん。
その千春ちゃんは、末っ子でミノリとは2歳違いだが・・・・・・。
あと2年もしたら、愛くるしいミノリも、そんなワイルドな感じになってしまうのだろうか?
想像するに――恐ろしいな。
「ミノリちゃんの迎えは、何時に行くん?」
「あと、1時間後かな」