私は和津の名を呼んだ。
「うぃー!」
・・・・・え?
和津はニコニコしながら、整ったベッドに座っていた。
「え?は?え?」
和津・・・元気じゃん。
「紫音〜ごめん〜。なんか貧血でぶっ倒れちった(笑)」
・・・・・・・・。
ぶっ倒れちった・・・って。
「中村、残念だな。まさかのただの貧血だってよ。」
昂は呆れた顔で和津を横目にする。
貧血・・・。
貧血って・・・こっちはこんなに心配したのに・・・。
怒りに似た感情が溢れる。

“・・・バシッ”

「最っ低!!!こっちはこんなに心配したのに・・・ぅう・・・・・馬鹿!!」

気付いた時には私は和津の頬を叩いていて、病室を出ていた。



あの時の和津の顔は、今でも覚えている。
今思えば辛そうな顔してたね。

降りだした雨は、いつまで続くのかな。
雨の音は不幸を招く。
病院から家への道のりは、ただ額を濡らした。
それでも熱る身体は夏の蒸し暑さのせいか。

あの時の和津の優しさ・・・気付いてあげられなくてごめんね。