はぁ、と重たいため息がこぼれる。

ため息をつくと幸せが逃げるとよく言うけれど、もう逃げるような幸せなんてない。


奏なんか、もう知らない。

あんなヤツ…



ぶすっと顔をしかめていたら、ガラガラと扉が開いて奏が帰ってきた。

でも私はあからさまに顔を反らす。

一瞬だけ合った目は悲しげで、

黄金色のふさふさな耳としっぽが力無く垂れている。

正確にはそんな風に見えるってだけ、ほんとはついてないけど。