皿を並べながら、ちらっとキッチンで悪戦苦闘している奏を盗み見る。
包丁を持つ手ががぷるぷるしてて危なっかしい。
それを見かねた謙斗が、こうだよ、とお手本に少し人参を切った。
それを見て、奏がすげーすげーとはしゃぎ回る。
楽しそうな奏の顔を見て、私も穏やかな気持ちになった。
でも、すぐに切なくなってしまう。
やっと、奏を好きって気付いたのに。
奏は私を通して、似た顔の謙斗を見てるんだね。
でも、私に勇気をくれたのは奏だから。
男顔だから…って、恋のひとつも目を背けてきた私に、
自信を持てって、前向きに考えるように言ってくれた。
まさか奏は、私のそんな想いが自分に向けられるなんて考えてもなかっただろう。
私だって思わなかったよ。
だからね、例え奏が私を幼馴染みだとしか見ていないのはわかってる。
私も幼馴染みとして、っていうのは無理だけど、
だけど、今度は私が奏の幸せを願うよ。
…絶対に本人には言ってやらないけど。
「理桜ー、風呂上がった」
ちょうど皿を並べ終えたとき、タオルで頭を拭きながら修司兄ちゃんが私を呼んだ。
「はーい、じゃあお風呂行ってきます」
私は楽しそうな二人に背を向けて、パジャマをとりに階段を上がっていった。
