明治屋クラムジー

 

十日に一度、松野屋には休日がある。
その休日に合わせて、弥一と母親の香絵が八重の元に訪れた。八重が迎え出て、弥一達を座敷まで案内した。
 

 
「お母ちゃん?弥一さん来られたわよ。今日はまた何かあるの?」
 

「ああ、弥一君いらっしゃい」
 

「香絵おばさんまで……そんなに大きな風呂敷を抱えて」
 

 
どうしたの?と言うように八重が首を傾げた。どうやら、ミツも香絵も何かを企んでいるらしい。弥一は困ったように笑っている。
 

 
「八重ちゃんの、晴れ姿が見たくてね」
 

 
香絵が微笑む。
それから弥一を座敷に取り残し、八重はミツと香絵に隣りの部屋へ移動させられた。
 

弥一は、まだ見ぬ八重の晴れ着に心を躍らせながら、八重が隣りの部屋に行くのを見守っていた。