あの写真館の中には、まだ弥一と八重の写真が飾られている。
「すみません」
「はい」
「知人の写真が、ここにあると聞いてきたのですが……」
重勝は写真館を訪ねていた。
常連客から、写真館に八重の写真が飾られているという話を聞き、いてもたってもいられなくなったのだ。
写真館の主人は老眼鏡を掛け直し、ふむと頷くと奥へ案内した。
「とびきり良く撮れたものを飾らせて頂いておるのですよ」
重勝は一枚ずつ確認し、八重と弥一の写る写真を見つけて思わずそれを凝視した。
「そのお二人ですか。お綺麗でしょう。自分の手を誇示するわけではないですが、あまりの素敵な笑顔に飾らせて頂きました」
「……」
重勝の両の目には、何年出ていなかったか知れない涙が浮かんでいた。
あまりにも、その綺麗さと伝わる幸福感に涙が溢れる。
写真館の主人は、きっと二人が幸せに過ごしていると信じて疑わないだろう。
そこには、重勝がこれまでに見たこともない、幸せそうに弥一の隣りで笑う八重がいた。
了
2008.01.28-2008.03.01

