前園八重殿
ごめんよ、八重。
君はきっと泣いていることです。
僕は小心で最低な男です。
この五日間、僕は仕事もせずひとり部屋で悩みました。
君を、前園家にいることで幸せになる君をそこから連れ出すことは、やはり気が気ではありません。
ミツさんも悲しむことだ。
君がいなくなれば、ミツさんは路頭にさまようことになる。
下を向いて歩かなければならなくなるよ。
そして何より君が、自分を犠牲にしてまで名も通らない僕と一緒にいたいと思ってくれることが、気掛かりです。
君は幸せにならなくちゃいけない。
君を奪うことで君の幸せを奪うようなことは、あってはならないんだ。
僕ももう二十六になり、世間体や理性を重要視するつまらない大人になってしまいました。
ごめんよ、許してくれ。
もう、君には会いにいかない。
君には会わない。
あの写真、いつまでも大切にします。
君もまだ、大切に持ってくれていることだろうから。
河津弥一

