その言葉は、すんなりと弥一の口をついて出た。あれ程八重の想いを尊重することを渋っていたのに、いざ八重を前にするとその理性は脆いものだった。
弥一は暫く八重を抱き締めて、いわゆる「駆落ちの計画」について話した。
いつなら抜け出せるか。
どのくらいの蓄えが集められるか。
ミツにどうやって援助をするか。
その三日後に弥一の前園家での仕事は終了する。そのまた五日後に決行しようということが決まった。
弥一の仕事が終わり次第、八重が忽然と姿を消せば、誰でも弥一を怪しむ。
かと言って、五日後というのも準備するに短か過ぎると思ったが、早く八重は前園家から抜け出したかった。
「それじゃあ八重、僕の仕事が終わりその五日後の夜中、皆が寝静まった頃に、君を迎えに来るよ」
「はい、はい弥一さん。待っています」
弥一はニコリと笑った。
八重も久しく心から、笑顔を見せた。
二人はまた暫くひしと抱き合い、あとは何事もなかったように八重は部屋へ戻り、弥一は仕事を再開した。

