八重が婚儀を済ませ、正式に前園家へ嫁いでから半年が経った。
八重は、ミツも一緒に前園家で暮らしている。
弥一は、半年の間に何通か八重からの文が届いていた。
それは信じられないくらい簡単な文章の羅列だったが、弥一はその文を心待ちにしている。
季節は木枯らしの吹くある日、弥一は何の因縁だろうか、前園家に仕事で出向いていた。
八重に会えるかもしれない。
そんな期待に胸が躍る。
「庭師の河津です」
弥一は厳粛な門構えにたじろぎながら、案内された庭園で仕事を始めた。
年末年始が近いので、数日かけて庭木を整えるという要請である。
弥一は八重と離れてからというもの、とにかく仕事に打ち込んできた。
そのおかげで弥一の庭師としての評判は上がり、収入も増えるようになった。
その為か、大財閥からも要請が来るようになったのだ。
一方、八重の方はもう既に、庭園にいる弥一を見つけてしまっていた。
「……」
隔離された部屋にいた八重は、久しく見る弥一の姿をずっと見つめていた。
飽きることもなく、ずっとだ。

