翌日八重は、前園家へと嫁いだ。
早朝に帰宅した八重に、ミツは特に何も言わず、着替えるようにだけ促した。
「八重、綺麗」
「ありがとう」
「白無垢もよく似合うわね」
婚儀でミツがそう言った。
どうして洋服の花嫁衣装にしなかったのかとも聞かれたが、八重は答えなかった。
確かに八重の夫となる利彦に洋服を勧められたのだ。しかし八重はもう洋服を着たくなかった。
八重の中で洋服の花嫁衣装とは、あの日弥一と写真を撮影した時に着たものだけ。
あれ以外の洋服は、ただの着物だ。
八重は、生涯で初めての写真を今でも大切に帳面へ挟んで保管している。
もう二度と、写真を撮ることはない。理由もなければ、必要もない。
それから、八重が弥一と会うことはなくなった。

