それから八日後のこと、日が経つのはあっという間で早かった。
八重はその翌日、弥一に会いに行くためにお気に入りの着物を着た。
弥一はいつもと変わらずその日も仕事のようだった。
仕事が終わって、真直ぐ帰宅しようと思ったが、贔屓にしている蕎麦屋へと足が向かう。
八重とはもうあの蕎麦屋に行くこともなくなったが、そこの蕎麦の味が恋しくて昼食をそこで済ませようとした。
その蕎麦屋で、八重は待っていた。
「弥一さん」
弥一の肩がビクリと跳ねる。
近頃弥一は、ちゃんと前を向いて歩くこともままならず、正面にいる八重にも気付かなかった。
八重、と呟くように呼んだ声は、酷く枯れていた。
「ご一緒しても宜しいでしょうか」
八重の問い掛けに、弥一は困った。
しかしそれを断ることはできない。わざわざ互いが互いを避けるようにして暮らしたこの数日の後、またわざわざ八重が自分に会いに来た。
何かあるのだろう。
弥一は八重の座る席の、正面に正座した。

