この義明とミツが近親関係にある。義明はミツの兄だ。ミツの旧姓が、河津である。
八重がミツを一人家へ置いて来たのを聞くと、義明は立ち上がってミツを迎えに行くと言った。ミツも含めて、夕食にしようとなったのだ。
八重は、ああ、気まずいなと少しだけ眉をひそめた。
「……八重、もしかしてミツさんと何かあったのかい?」
「いえ、何も」
「でも、家を飛び出して来たんじゃあないのかい」
義明が家を出た後、弥一は八重にことごとく聞いてきた。しかし、前園財閥の求婚の話を、八重が弥一に話すことはできない。
できることならば、八重は弥一と夫婦になりたいのだった。
八重が黙り込むのをあぐねていると、買い物を終えた香絵が帰宅した。八重を見るなり、笑顔を見せる香絵に、八重は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「今父ちゃんがミツさんを迎えに行っているよ」
「あらそうなの。八重ちゃん一人で来たのねえ」
のんびりと言う香絵を、八重はぼんやりと眺めていた。

