それは、誰もが全く予想だにしない出来事だった。
それから男は淡々と続ける。
「半月程前に、八重殿が西洋の着物を召されて歩いているのを利彦様が御覧になって、酷く気に入られたのです」
「捜していたら、少々参上が遅くなってしまいました」
八重は驚愕した。
二人の男は、今度前園家へ招待すると言って帰っていった。
「八重」
暫くして、ミツがポツリと呟いた。ハッと我に返り、八重はミツの方へ振り返った。
「あんた、幸せになれるわ」
「え?」
「前園財閥の御曹司よ、断る理由なんてないじゃない」
喜々として話すミツに、八重は嫌悪して仕方がなかった。八重は、弥一でない男との結婚生活を全く想像できなかったし、何も理解することができなかった。
「弥一さんは……、私には弥一さんがいるのにっ……」
「前園家の夫人になれるのよ。弥一君とは今までのように、親類として付き合っていけば良い」
「そんなこと、おかしいわ」
八重は部屋を飛び出した。

