そう言って、主人は写真を弥一に手渡した。主人は焼き増しをすると言って、また奥の部屋へ向かってしまった。
「弥一さん、私は写真を初めて見ました」
「そうか。記念になるだろう?こうして今日の僕達が絵のように残るんだ」
写真を撮り終えたことで緊張は解け、嬉しそうに微笑む八重に弥一は安心した。
どれどれと写真を覗き込むミツと香絵。すると、香絵がおかしそうに笑った。
「弥一、顔が少し緊張してたみたいねぇ。八重ちゃん、凄く綺麗よ」
「ぼ、僕も写真なんて撮るのは初めてだから……」
緊張しましたよと呟く弥一に、八重が寄り添った。
「一生の、宝物ですね」
「あぁ、宝物だ」
主人が焼き増しをした写真は、八重、弥一、ミツ、香絵に一枚ずつ配られた。
余分に現像された残りの一枚は、あまりの良い出来に主人が写真館へ飾らせてくれと言うので、二人は快く承諾した。
五月五日のことだった。

