恥ずかしくて俯いている八重を、弥一は見上げる。着物ではない八重は、酷く新鮮に感じられた。
「うん、……よく似合ってる。八重」
微笑む弥一に、八重は自分の胸が高鳴るのが解った。
ああ、私はこの人の妻になるのだと、確信した瞬間だった。
「八重は、カメラを知っているかい?」
「え?」
「写真を、撮りに行こう」
「えっ!?」
写真は、この辺りではあまり普及していない。庶民で知る者も限りがあるだろう。
存在は知っているものの、それが一体どうすればよいものなのか分からず八重は驚いて拒んだが、三人に記念だからと言いくるめられてしまった。
そのまま平屋を出て、四人は歩き出す。
道行く人々は、洋服を着た八重を物珍しそうに振り返っては見た。
「恥ずかしいよ、弥一さん……」
「八重は僕のもんだって、世間に見せびらかすんだ。いいだろ?」
そう言って弥一は八重の手を取った。
八重は顔から火が出る程恥ずかしかったが、そんな二人を母親達がひやかした。
「写真を取りたいんです」

