ひとまず、息が整った。 消えた苦しさに安心していると、 様子を伺っていたらしい彼が言った。 「痛いんだけど」 「……うん」 そりゃそうだ。 俺に噛まれたんだから。 「どうすればいいと思う?」 「……うがいでもする?」 そう尋ねるように言うと、 そうじゃない。と、 不機嫌なような、笑っているような そんな表情で彼は言った。 「舐めて」 さっきの俺のように、舌を出す。 つまりはこれ、 何かを企んでいる表情だった。