でも、まさか。
刺されたりなんて……しないよね。


麻美の冗談だろう。
気にしないようにしよう。


それに別に塗師君とは隣の席だし。
話しするくらい普通だよね。



その時はそんな風に軽く考えて居た。





放課後、私はいつも通り図書館へ行く。


今日も先輩は居ないみたい。

がっかりしつつも、読みかけの本を取りに本棚へ向かう。



「お前、毎日此処来てるのか?」


「ぬっ、塗師君??」


私のお気に入りのコーナーがある本棚には先客が居た。



「え、ま、毎日ではないけど。」

「ふぅん。」


塗師君は一冊の本を手に取ると、さっさと読書スペースに行ってしまう。


なんだか煮え切らない。


そう思いつつも私も本をとり読書スペースへと向かった。


本を読んでいるとあっという間に時間が過ぎていく。

暗くなってきたし、そろそろ帰ろうかな。



本を戻して図書館を出る。


「おい、美咲。暗いから家まで送ってやる。」


校門を出たあたりで声を掛けられる。

「塗師君??」


一体どういう風の吹き回しなの?
塗師君が何を考えてるのか全然分からない。


「何企んでるの?」


塗師君の顔に、嫌な感じの笑みが浮かんだ。