「ねぇ、塗師君っ。」

朝練の後、私はこっそり塗師君に話し掛ける。


「ん?なんだ?」


「ドッヂボールのチームに黒いオーラの人居るの知ってた?」


塗師君はにやりと笑う。

「あいつだろ?」


塗師君の視線の先には、黒いオーラを纏った子。
クラスメイトの山田君。

「見えてたんだね。」


ちょっとほっとする。


「いや。俺には見えてない。が、なんとなくそうじゃないかとは思ってた。」



それって、どういう……?



「おいっ!美咲、恭一郎!ぼさっとしてるとミーティング始まるぞ!!」


大地が私たちを呼ぶ声がする。

「おう。」


塗師君は軽く返事をして教室に入ってしまう。


私も遅れて後に続く。


また疑問が増えてしまった。
黒いオーラの人の事、もっと詳しく聞きたかったのになぁ。




チャイムが鳴る。


私は大人しく席についた。






――――――




「美咲さ、なんか急に塗師君と仲良くなったんじゃない?」


昼休み。お昼を一緒に食べていた麻美がそんな事を言い出す。


「ちょ!なっ、何言ってんの!」


「朝も二人でなんか話してたでしょ。」


確かに、話したけど、仲いいとかそんなんじゃなくて、業務連絡みたいなものなのに。

……なんて、麻美には言えず。
なんか誤解されてる?


「でも、気をつけてよね。塗師君ファン、多いみたいだし。女は怖いからな。」

「何それ?」


「ファンクラブの子に刺されたりしないでよね。」


って麻美は笑う。
ファンクラブとか。
もうそんなのができちゃってるのかぁ。


確かに。
見た目は凄くかっこいいもんね。


ちらりと、塗師君を見ると、相変わらず女の子に囲まれていた。


なんか、凄い。